ワクチンを理解する
日本政府においてもワクチン開発の重要性を認知し、多方向からワクチンの研究開発支援を行うようになっています。小西安においても、研究開発支援の他、製造に必要な情報と材料の提供、ワクチン創薬ベンチャーへの出資など、様々な取り組みを進めてきました。
本記事では、感染症の基本的な情報、ワクチンの仕組みや最新技術などについて、解説していきます。
感染症とは
感染症とは細菌、ウイルス、真菌などの病原体が体内に侵入し増えることによって体に異常が生じる状態のことです。これらの病原体は、それぞれ異なる特徴を持っています。
細菌は、単一細胞で構成される微生物で、栄養源さえあれば単独で分裂・増殖できます。人間の体内に住む常在菌や発酵食品の製造に使われる細菌がいる一方で、食中毒や結核などの感染症を引き起こす有毒なものも存在します。
ウイルスは、数10~300nmと非常に小さく、遺伝物質である核酸(DNAまたはRNA)がタンパク質の殻で包まれたシンプルな構造をしています。細菌とは異なり、宿主となる生物の細胞内でしか増殖できません。生物の細胞の中に入り込んだウイルスは、その機能を借りて自らをコピーして増殖します。
これらのウイルスにより発生する感染症には、古くから知られる風疹、麻疹、おたふくかぜなどから、インフルエンザ、マラリア、デング熱など、多種多様のものがあります。病原体の種類によって、引き起こされる症状や感染経路、治療法も異なるため、それぞれに適した予防策が必要です。
ワクチンの仕組み
私たちの体には免疫という感染症に対する抵抗力が備わっており、ワクチンを接種することで感染症に対する免疫が高まります。免疫機能の中でも大きな役割を担うのが抗体です。ヒトは体内に侵入してきた病原体に対して、それぞれに対応する抗体をつくり出し、次にその病原体が侵入した際に攻撃・排除します。
この仕組みは免疫記憶と呼ばれ、1度感染したことがある病原体に再び感染した場合、1度目よりも素早く病原体を攻撃することができます。ワクチンは、その抗体を事前に体内でつくっておくものです。
つまりワクチンは、実際の病原体による感染症を引き起こす前に、安全な形で免疫機能に病原体を記憶させて、あらかじめ抗体を作っておく役割を果たします。これにより、病原体が実際に体内に侵入してきた際に、素早く効果的に対抗できるようになります。
ワクチンの種類
ワクチンには、病原体の毒性を弱めたものや感染力をなくしたもの、病原体のタンパク質を使ったもの、病原体をつくるもとになる遺伝情報をもとに作られたものなど、幾つかの種類があります。
古くから使われているものには、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドがあります。
生ワクチンは病原体の毒性を弱めて病原性をなくしたもので作られるワクチンです。実際の感染に近い状態で免疫が作られます。
不活化ワクチンは、病原体の毒性や病原性をなくして不活化したもので作られるワクチンです。安全性が高い一方で、生ワクチンと比べて効果が低くなるため。複数回の接種が必要になる場合があります。
トキソイドは、病原体ではなく、病原体がから出る毒素を無毒化して作られるワクチンです。不活化ワクチンと同様に複数回の接種です。
近年では、バイオテクノロジーの進歩により、組換えタンパクワクチン、ウイルスベクターワクチン、VLPワクチン、mRNAワクチンなども承認されています。これらの新しいタイプのワクチンは、より効率的で安全性の高い免疫獲得を可能にしています。
メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン
ワクチンの中で、COVID-19で初めて実用化されたmRNAワクチンについて少し詳しく説明します。mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報(設計図)の一部を使ってデザインされたものです。
ウイルスが増殖する時には、遺伝子(DNAまたはRNA)が設計図となり同じウイルスのコピーが複製されます。この時、遺伝子の複製ミスによる変異が頻繁に起こります。このウイルスの変異は、ウイルスの生存戦略として、変化する自然界の環境に適応するためともいわれています。
ウイルスが変異すると、それに対応するワクチン(変異株対応ワクチン)が必要になる場合があります。そのため出来るだけ広い変異株に対応できるワクチンが求められます。mRNAワクチンの大きな利点の一つは、従来のワクチンと比較して設計変更が容易なことです。また、製造期間が従来よりも短いのも特徴です。これにより、変異したウイルス(変異株)が出現しても、迅速に対応することが可能になります。
また、従来のmRNAワクチンの効果の持続は、数カ月と比較的短いため、持続期間の長い自己増殖型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)も開発されています。従来のmRNAワクチンは細胞内でタンパク質を作ると消滅します。それに対し、レプリコンワクチンは、体内で自己増殖する機能をもっており、少量の投与でも長期間にわたって免疫を維持できる可能性があります。
治療薬としてのワクチン
感染症の予防薬として開発されてきたワクチンですが、近年、疾病の治療薬として開発が期待されています。がん、痴呆、リウマチなど従来の低分子化合物での治療では効果が低い疾患に対し、点滴などによりタンパク質(抗体医薬)を直接投与する治療が普及していますが、これに置き換えられる可能性があるものとしてmRNAワクチン(mRNA医薬品)やVLPワクチンが注目されています。
すなわち、体外で製造された抗体を投与する代わりに、ワクチンを投与する事により体内で抗体を製造する治療方法です。抗体医薬は大きな設備で培養によりタンパク質(抗体)を製造します。通常、点滴により長期間投与するため高額な医療費となり、患者の身体的負担も大きくなります。
これに対し、ワクチンは数回、低用量を投与することで治療できるので、薬剤コストと患者負担の大幅な軽減になります。全ての疾患で抗体医薬からワクチンに置き換えられる訳ではありませんが、その可能性が多岐にわたり検討されています。
まとめ
感染症の予防薬として開発されてきたワクチンですが、近年、疾病の治療薬として開発が期待されています。
小西安では、事業活動を通じた社会貢献の理念のもと、2018年よりワクチン創薬ベンチャーであるVLP Therapeutics社に対し、出資を含むワクチンの開発支援を行い、ワクチン関連商材の拡大にも努めてまいりました。
現在では、ワクチン・VLP Therapeutics社に留まらず、核酸医薬・ペプチド・抗体医薬等を含むバイオ医薬品全般の研究開発・製造に必要な情報と材料を、より多くのメーカー様に提供できるように取り組みを強化しています。